ヨーロッパ州/アンドラ国歌「偉大なるカルラマニ」 のバックアップ(No.6)
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El Gran Carlemany
偉大なるカルラマニ
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歌詞全文
| El gran Carlemany, mon pare, dels alarbs em deslliurà, i del cel vida em donà de Meritxell la gran Mare. | 偉大なるカルラマニ、我が父よ アラブ人より我を解放せし そしてメリチェイの聖母の命を 天より我へと与え給いし |
| Princesa nasquí i pubilla entre dos nacions neutral; sols resto l'única filla de l'imperi Carlemany. | 公国として、相続人として生まれ 二つの国の間で中立である カルラマニの帝国の ただ独り残れる娘 |
| Creient i lliure onze segles, creient i lliure vull ser. Siguin els furs mos tutors i mos Prínceps defensors! | 11世紀もの間、敬虔にして自由であり これからもそうあるだろう 願わくば、法が我が守護者であり 大公が庇護者であらんことを! |
歌詞逐語訳
1
| El | gran | Carlemany, | mon | pare, |
| アル | グラン | カルラマニ | モン | パラ |
| 定冠詞 | 大きい | カルラマニ | 私の | 父 |
| 偉大なるカルラマニ(カール大帝)*1、我が父よ | ||||
| dels | alarbs*2 | em | deslliurà, |
| デルス | アラルプス | アム | ダスリュラ |
| 定冠詞+~から | アラブ人 | 私を | 解放した |
| アラブ人より我を解放し | |||
| I | del | cel | vida | em | donà, |
| イ | デル | セル | ビダ | アム | ドゥナ |
| そして | 定冠詞+~から | 空 | 命を | 私に | 与えた |
| 天より私に命を与えた | |||||
| de | Meritxell, | la | gran | Mare. |
| ダ | メリチェイ | ラ | グラン | マラ |
| ~の | メリチェイ | 定冠詞 | 大きい | 母 |
| メリチェイの偉大なる聖母*3の | ||||
2
| Princesa | nasquí | i | Pubilla |
| プリンセサ | ナスキ | イ | プビジャ |
| 大公の娘 | 私は生まれた | ~と | (女子の)相続人 |
| 大公の娘として、相続人*4として生まれ | |||
| sols | resto | l'única | filla, |
| ソルス | レストゥ | ルニカ | フィリャ |
| 唯一 | 残った | 一人の | 娘 |
| ただ独り残れる娘、 | |||
| de | l' | imperi | Carlemany. |
| ダ | リンペリ | カルラマニ | |
| ~の | 定冠詞 | 帝国 | カルラマニ |
| シャルルマーニュの帝国の。 | |||
3.
| Creient | i | lliure | onze | segles, |
| クレヤン | イ | リュレ | オンゼ | セッグラス |
| 敬虔な | そして | 自由な | 11 | 世紀 |
| 11世紀にわたり*7、敬虔にして自由であった | ||||
| creient | i | lliure | vull | ser. |
| クレヤン | イ | リュレ | ブイ | セー |
| 敬虔な | そして | 自由な | 私は~だろう | である |
| これからも敬虔にして自由であろう | ||||
| Siguin | els | furs*8 | mos | tutors |
| スィギン | アルス | フルス | モス | トゥトールス |
| ~であれ | 定冠詞 | 法 | 私の | 守護者 |
| 法が我が守護者ならんことを、 | ||||
| i | mos | Prínceps | defensors! |
| イ | モス | プリンサプス | ダフェンソールス |
| そして | 私の | 大公 | 庇護者 |
| 我が大公が庇護者ならんことを! | |||
特記事項
- 作詞者はジョアン・バプティスタ・ベンリョーク・イ・ビボ(Joan Baptista Benlloch i Vivó)。スペインのバレンシア出身*9のため、ファーストネームはカスティーリャ語(スペイン語)で「フアン・バウティスタ」とされることも。最終的に枢機卿となったが、キャリアの途中でウルヘル司教区の司教を務めていたことがある。アンドラ公国の国家元首は「ウルヘルの司教」と「フランス大統領」が共同で就くことになっている*10ので、つまり彼は名目上アンドラ大公だったことがある。
- 作曲はアンリク・マルファニ・イ・ゴセット(Enric Marfany i Gosset)。アンドラ国内のサン・ジュリアー・デ・ロリア出身の聖職者でオルガン奏者。カタルーニャ語以外の情報源だと姓が「マルファニ・ボンス」になってるんだけどこれなに…?
- 1921年に採用。初演はこの年の「国家の日」(9/8, 国家の守護聖人・メリチェイの聖母の日でもある)にメリチェイ教会で行われた。
- 世界で唯一カタルーニャ語で歌われる国歌。
- アンドラ公国はピレネー山脈の中、スペインとフランスに挟まれ存在するヨーロッパの小国。サイズは奄美大島ぐらい。
- スペインでは一地方の言語であるカタルーニャ語だが、この国では国家公用語。
- シャルルマーニュ(カタルーニャ語でカルラマニ)がイスラム教徒に対抗するために当地に設置した「スペイン辺境領」が国の前身とされる。
「偉大なる父、カルラマニ」と歌うのはこのことによる。 - 曲中にある "alarbs" (単数 alarb)は「イスラム教徒」を指す古い言い回し。
アラブ人なら Arab じゃないの?と思うかもしれないが、アラビア語の al-ʾarab から来ている "l" らしい。 - 中世の頃にはイスラム教徒はひとくくりに「アラルプ」と呼んでいた。
昔の日本人が外国人を「南蛮」でひとまとめに呼ぶ感覚に近い。 - なお、イスラム世界サイドでもヨーロッパ人をひとまとめに「フランク人 إِفْرَنْجِيّ ʾifranjiyy」と呼んでいたようなのでお互い様なところがある。
- Meritxell メリチェイ はアンドラの村の名前。聖母の伝説があり、「メリチェイの聖母」はアンドラの守護聖人。
- スペインの一地方の言語ではあるが、ピレネー山脈を挟んですぐ隣がフランスということもあり、色々フランス語に似ている。
- 語末の子音は発音しない傾向あり。(語末の-ntの-tとか、-rとか)
- アクセントのない母音が弱く発音される。(elは[əl]だし、donàは[duna]になる)
- ll はリャ行に近い([ʎ])。上述の Meritxell など、末尾に来る際はほぼ「イ」っぽい。
- nyは[ni]ではなく[ɳ]。後ろに母音がつかないので「Carlemany」は「Car-le-many」で3音です。
*1 建国の祖とされる
*2 イベリア半島にいたイスラム教徒全般を指す、やや古風な言い回し
*3 アンドラ領内メリチェイ村に出現したとされる聖母の伝説にちなみ、アンドラの守護聖人は「メリチェイの聖母」である
*4 カタルーニャ文化では男児がいない場合長女が遺産を相続する風習があった
*5 フランスとスペインのことである
*6 ナポレオン戦争で中立を保ったことを指す
*7 803年のスペイン辺境領設置から数えて、この詞が作られた20世紀初頭まで概ね11世紀である
*8 法と訳したがかなり複雑な概念。
*9 ここも広義のカタルーニャ語圏。バレンシア方言は結構バルセロナ辺りと違うので、バレンシア語という別の言語という向きもある
*10 なので2019年現在、アンドラの元首の片割れはマクロン大統領である