ヨーロッパ州/スロヴァキア国歌「稲妻がタトラの上を走り去り」 のバックアップ(No.5)


Nad Tatrou sa blýska

稲妻がタトラの上を走り

別名:Dobrovoľnícka(義勇軍の歌)*1
 
男声合唱によるもの。素朴な感じがとても素敵だと思う。
 
ロックアレンジ。なんと4番までフルという貴重な動画。演奏も格好良い。
 

歌詞全文

Nad Tatrou sa blýska
Hromy divo bijú
Zastavme ich, bratia
Veď sa ony stratia
Slováci ožijú
 
To Slovensko naše
Posiaľ tvrdo spalo
Ale blesky hromu
Vzbudzujú ho k tomu
Aby sa prebralo
タトラ山脈の上を光が走り
稲妻が激しく鳴り響く
兄弟よ、それを止めようではないか
すると稲妻は消え失せ
スロヴァキア人は目覚めるのだ
 
我らのスロヴァキアは
今まで深く眠っていた
しかし雷光が激しく鳴ると
スロヴァキアは目覚め
ついには起き上がったのだ
+  3番、4番
Už Slovensko vstáva
Putá si strháva
Hej, rodina milá
Hodina odbila
Žije matka Sláva
今やスロヴァキア人は目覚めて
その枷を打ち壊す
ああ、愛する家族よ
時は来た
母なる栄光は生きている
Ešte jedle rastú
Na krivánskej strane
Kto jak Slovák cíti
Nech sa šable chytí
A medzi nás stane
樅(もみ)の木はなおも育つ
クリヴァン山の斜面に
スロヴァキア人だと感じる者は
みなサーベルを取らせ
我らの間に立たせよう

歌詞逐語訳

1.

NadTatrousa blýska
ナッタトロウサ ブリースカ
~の上をタトラ山脈光る
タトラの山*2の上を光が走り
 
Hromydivobijú,
フロミヂヴォビユー
稲妻が荒々しく打ち付ける
稲妻が激しく鳴り響く
 
Zastavmeichbratia,
ザスタヴメイフブラチャ
止めようそれを兄弟
兄弟よ、それを止めようではないか
 
Veďsaonystratia
ヴェチオニストラチャ
すると再帰代名詞彼らは失うだろう
すると稲妻は消え失せ
 
Slováciožijú.
スロヴァツィオジユー
スロヴァキア人たち目覚める
スロヴァキア人は目覚めるのだ*3
 

2.

ToSlovenskonaše
スロヴェンスコナシェ
このスロヴァキア我らの
我らのスロヴァキアは
 
Posiaľtvrdospalo
ポシャリトゥヴルドスパロ
かつて深く眠っていた
かつて深く眠っていたのだが
 
Alebleskyhromu
アレブレスキフロム
しかし光が雷の
しかし、雷光が
 
Vzbudzujúhok tomu
ヴズブズユークトム
目を覚まさせる彼をそれに対し
スロヴァキアを揺るがし
 
Abysa prebralo.
アビサ プレブラロ
~するほどに起こす
ついには起こしてしまったのだ
 
+  3番、4番はあまり歌われない

3.

Slovenskovstáva
ウシスロヴェンスコフスターヴァ
すでにスロヴァキア立ち上がり
いまやスロヴァキアは立ち上がり
 
Putásistrháva
プタースィストゥルハーバ
*4打ち壊す
枷を壊して
 
Hej,rodinamilá
ヘイロディナミラー
ああ家族愛しい
ああ愛しい家族よ
 
Hodinaodbila
ホディナオブディラ
打つ
時は来た
 
ŽijematkaSláva
ジイェマトカスラーヴァ
生きている栄光*5
母なる栄光は生きている
 
 
 
 
 
 

4.

Eštejedlerastú
エシテイェドレラストゥー
なおも樅の木育つ*6
樅(もみ)の木はなおも育つ
 
Nakrivánskejstrane
クリヴァンスケィストラネ
~にクリヴァン山の斜面、面
クリヴァンの斜面に
 
KtojakSlovákcíti
クトヤクスロヴァクツィーティ
~する者~のようにスロヴァキア人感じる
スロヴァキア人だと感じる者はみな
 
Nechsašablechytí
ネフシャブレヒティ
~させよ自身にサーベル取る
サーベルを取らせよ
 
Amedzinásstane
メヂナーススタネ
そして~の間に我ら立つ
我らの間に立たせよ
 

特記事項

作詞者はヤンコ・マトゥーシカ(Janko Matúška)。23歳の時に作詞

当時スロヴァキアはオーストリア・ハンガリー帝国の一部であったため、民族主義者であった彼の師が教職から追放された。マトゥーシカを含む学生たちが抗議の行進を行う中でこの歌が生まれたとされる。この行進はプレスブルク(現ブラチスラバ)からレボチャの町まで、この地方の最高峰を含む2500m級の山々*7が続く、雄大なタトラ山脈を望む旅路であった。

曲はスロヴァキア民謡「彼女は小さな井戸を掘った(Kopala studienku)」のもの。作曲者未詳。

  • 1918年に公式に国歌として採用。その後、チェコスロバキアの誕生により「チェコ国歌+スロヴァキア国歌」と2つ繋げた歌が国歌となる。
    スロヴァキア独立後、今度は単独で改めて国歌として制定される。
    ちなみに「第二の国歌」として愛された「スロヴァキア人よ」もあり、こちらはポーランド国歌>のテンポを変更してスロヴァキア語の歌詞をつけたもの。後に「スラヴ人よ」として汎スラヴ主義の賛歌となり、ユーゴスラヴィアの国歌にもなった。*8
  • 2番まであり、コーラス部分などはない。各番の後半3行は繰り返す。
  • 一応原詩は4番まであった。個人的には4番の詩がとてもかっこいい。
  • 曲が格好良い。特にチェコスロヴァキア時代の「緩やかで叙情的なチェコ国歌からの…タトラ山脈!稲妻ッ!」という緩急には痺れて憧れること請け合い。
  • チェコ語とスロヴァキア語はわりと似ているけど、この歌詞を見てると「ああっ結構違うのね!」という気持ちにさせてくれる。
  • 4番の歌詞は「モミの木*9がクリヴァン山*10の斜面に育ちゆく。我こそはスロヴァキア人と覚える者あれば、彼の手にサーベルを握らせ、我らと共に立たせん」!素敵!
  • 至って分かりやすい表記法*11。j はヤ行、š はシャ行。i/y は同じくイの音。
  • di, ti などは「ヂ、チ」に近い。divoは「ヂヴォ」。*12
  • ved' とか posial' のアポストロフィは、専門的に言えば口蓋化音。わかりやすく言うと拗音の寸止め。*13
     posial'を例に取ると「ポシャリ posiali」と言いかけて最後の -i だけ発音しない。伝われ。
  • ちなみにこの口蓋化音、チェコ語にも t' とか d' とかはあるけど、l' だけはチェコ語に存在しない。Lの後ろにアポストロフィがついてたらスロヴァキア語とすぐわかる。
  • 母音の上のアクセントは長母音を表すが、歌うぶんにはさほど関係ない。




*1 中国とは無関係
*2 スロヴァキアの象徴的な山脈である
*3 何に目覚めるか?民族主義である。
*4 チェコ語の pouta (単数 pouto) にあたる
*5 擬人化されているらしい
*6 チェコ語なら rostou
*7 ちなみに日本の山の高さランキングだと100位以内にすら入りません…
*8 SlavとSlovakiaの類似も決して偶然ではなくて…長くなりますね
*9 理想的な男性像の比喩らしいです
*10 タトラ山脈の中でも美しさで知られる名峰
*11 だと思うんだけどあまり賛同されない
*12 うーん、すごく西スラヴ語。南じゃないのは確か。
*13 わかりやすいか…?