ヨーロッパ州/ウクライナ国歌「ウクライナ未だ滅びず」 のバックアップ(No.3)


ウクライナ国歌
Ще не вмерла Українa
Shche ne vmerla Ukrajina
ウクライナ未だ滅びず
 
 

歌詞全文

Ще не вмерла України ні слава, ні воля.
Ще нам, браття молодії, , усміхнеться доля.
Згинуть наші вороженьки, як роса на сонці,
Запануєм і ми, браття, у своїй сторонці.
Душу й тіло ми положим за нашу свободу,
І покажем, що ми, браття, козацького роду!
ウクライナの栄光も自由も未だ滅びず
若き兄弟よ、運命は未だ我らに微笑む
我らの敵は陽射しの前の露のごとく消え去る
兄弟よ、我らは自らの国を治めようではないか
我ら魂と肉体とを、我らの自由のため捧げん
そして示そう、兄弟よ、我らがコサックの末裔であると
 
+  2番、3番は現在では国歌としての公式の歌詞からは外されている
Станем браття, в бій кривавий, від Сяну до Дону
В ріднім краю панувати не дамо нікому.
Чорне море ще всміхнеться, дід Дніпро зрадіє,
Ще на нашій Україні доленька наспіє.
Душу й тіло ми положим за нашу свободу,
І покажем, що ми, браття, козацького роду!
血の戦いに立とう、兄弟よ、シャン川からドン川まで
我らの祖国を治めることは、他の誰にも許さない
黒海は未だ我らに微笑み、祖父たるドニエプル川は歓喜する
我らのウクライナに、運命は再び花開くのだ
我ら魂と肉体とを、我らの自由のため捧げん
そして示そう、兄弟よ、我らがコサックの末裔であると
А завзяття, праця щира свого ще докаже,
Ще ся волі в Україні піснь гучна розляже.
За Карпати відіб'ється, згомонить степами,
України слава стане поміж народами.
Душу й тіло ми положим за нашу свободу,
І покажем, що ми, браття, козацького роду!
我らの忍耐と誠意ある働きは報われるだろう
自由の歌声はウクライナ全土に響き渡るだろう
カルパチアの山々をこだまし、ステップを駆け抜けるだろう
ウクライナの栄光は世の人々の知るところとなる
我ら魂と肉体とを、我らの自由のため捧げん
そして示そう、兄弟よ、我らがコサックの末裔であると
 
 
 
 
 
 

歌詞逐語訳

 
ЩеневмерлаУкраїниіслава,іволя,
ShchenevmerlaUkrajinyislavaivolya
シチェーヴメールラウクライィーヌィスラーヴァヴォーリャ
まだ~ない死んだウクライナの~も栄光~も自由
ウクライナの栄光も自由も、未だ滅びず。
 
Щенам,браттямолодії,усміхнетьсядоля.
Shchenambrattjamolodijiusmikhnet'sjadolya
シチェーナムブラーチャモロディイウスミフネツィヤードーリャ
まだ我らに兄弟若い微笑む運命
若き兄弟よ、運命は未だ我らに微笑んでいる。
 
Згинутьнашіворіженьки,якросанасонці.
Zhynut'nashivolizhenkyjakrosanasontsi
ズヒィヌチナシヴォリジェンクィヤクロサソンツィ
滅ぶ我々の敵たち~のように~の前で太陽
我らの敵は、陽射しを浴びた露のように消え去るだろう
 
Запануєміми,браття,усвоїйсторонці.
Zapanujemimybrattjausvojijstorontsi
ザパヌーイェムムィブラーチャスヴォイイストロンツィ
我々は治めようそして我ら兄弟~で自らの国を
そして兄弟よ、我らは自らの国を治めようではないか。
 
Душуйтіломиположимзанашусвободу,
Dushujtilomypolozhymzanashusvobodu
ドゥーシュイチーロムィポロージムナシュスヴォボードゥ
肉体我ら捧げる~のために我らの自由
自由のため、我らは魂と肉体を捧げよう
 
Іпокажем,щоми,браття,козацькогороду.
ipokazhemshchomybrattjakozats'kohorodu*1
ポカージェムシチョームィブラーチャコザツコホロードゥ
そして我らは示そう~ということを我ら兄弟コサックの出自
そして示そう、我らのコサックの血を!
 
 
 
 
 
 
 
 
+  現行歌詞はここまで。2003年以前は以下の2番・3番があった
Станембраття,вбійкривавий,відСянудоДону
Stanembrattjavbijkrivavijvidsjanudodonu
スターネムブラーチャビィクリヴァーヴィイヴィートシャヌドヌ
我らは立とう兄弟~に血の~からサン川~までドン川
立とう、兄弟よ、サン川*2からドン川*3まで!血の戦い
 
Вріднімкраюпануватинедамонікому.
Vridnimkrajupanuvatynedamonikomu
リドニムクラーユパヌヴァーティダモニコム
~で出生の支配すること~ない我らは与える誰にも
我らの祖国を治めることは、他の誰にも許さない
 
Чорнеморещевсміхнеться,дідДніпрозрадіє,
Chorne*4moreshchevsmikhnet'sjadidDniprozradije
チョルネモーレシチェーウスミフネッツァヂードドニプロズラディーイェ
黒いまだ微笑む祖父ドニエプル川喜ぶ
黒海は微笑み、祖父たるドニエプル川は歓喜する
 
ЩенанашійУкраїнідоленьканаспіє.
ShchenanashijUkrajinidolen'kanaspije
シチェーナシィウクライーニドレィンカナスピーイェ
まだ~に我らのウクライナ運命歌う
我らのウクライナに、運命はまだ歌ってくれる
 
Азавзяття,працящирасвогощедокаже,
Azavzjattjapratsjashchirasvohoshchedokazhe
ザヴジャッチャプラツィヤシチーラスヴォーホシチェードカージェ
そして熱意働き誠実な自らのまだ報いる
我らの熱意と、誠実なる働きは報いられる
 
ЩесяволівУкраїніпісньгучнарозляже.
ShchesjavolivUkrajinipisn'huchnarozlyazhe
シチェーシャヴォリーヴクライーニ*5ピシニフチナロズリャージェ
まだ自身を(再帰)自由のウクライナで(音量が)大きい溢れる、波及する*6
自由の歌声は、ウクライナ全土に響き渡り
 
ЗаКарпативідіб'ється,згомонитьстепами,
ZaKarpatyvidib-jetsiaz-homonut'*7stepamy
カルパティヴィヂブイェッツァズホモヌーチステパーミ
~を越えてカルパティア山脈反響するざわめくステップを
カルパティアの山々をこだまし、ステップを駆け抜ける
 
Україниславастанепоміжнародами.
Ukrajinislavastanepomizhnarodamy
ウクライーニスラーヴァスターネポミージナロダームィ
ウクライナの栄光立つ、現れる~の間で国家、民族
ウクライナの栄光は諸民族の知るところとなる
 

特記事項

  • 1862年に歌詞が、翌63年には曲がつけられ、64年にはリヴィウで初演。
  • だが、民族運動の高まりを危惧する当局に目をつけられ、作詞者は辺境に追放されるなどしていた。
  • 1917年から3年間だけ成立したウクライナ人民共和国*8の国歌に採用される。
  • その後、ソ連時代にはこの歌詞は中央から拒否され*9、「ソビエトの国、ウクライナ!」「共産主義バンザイ!」的な新国歌を作ることになる。*10
  • 最終的に「ウクライナ未だ滅びず」が国歌となるのは独立後の1992年。それでも歌詞はなかなか公式には制定されず、現行の歌詞となったのは2003年とかなり最近。
  • それまでの10年ほどは3番まで歌っていたが、2003年以降は1番のみを国歌としている。
  • г(g) は概ねハ行かア行に聞こえるはず。実際には有声の [h] であり、発音記号では [ɦ] と表記される。日本語でもカジュアルな発話で「おはよう」が「おあよー」になることがあるが、あれは大抵 [oɦajo:]だったりする。
  • еはロシア語のように「イェー」ではなく「エー」。逆に э が「イェー」である。
  • キリル文字ながら і が出てくる。これが [i] で、ロシア語などでおなじみの и は [ɨ]、つまりロシア語の ы にあたる。ややこしいかも。
文字ロシア語ウクライナ語
ы[ɨ]
и[i][ɨ]
і[i]
ї[ji]
 
 

Tag: スラヴ語派 インド・ヨーロッパ語族 キリル文字





*1 厄介なことに主格は рід / rid である。管理者はそんなウクライナ語がとても好き
*2 ウクライナ語では「シャン川」だが、日本ではポーランド名の「サン川」が一般的。ポーランドと西部ウクライナの境界付近の川。
*3 ロシアとウクライナの境界付近にある川。川自体はロシア領にあるが、流域はウクライナ東部に及ぶ
*4 ロシア語を読める方はぎょっとするかもしれないスペルである
*5 本稿のカナ表記では同一だが、語尾は -и ではなく -і である。格が異なる。
*6 単独では「注ぐ」。сяと共に用いられると「溢れる、波及する」などの意味がある
*7 zhomonut' ジョモヌーチ と読まれないための表記。
*8 約3年と短命だったが、この共和国の存在 - この地に独立国が一度存在し得たこと - は後のウクライナにとって大きな意味を持つこととなる。実際、国歌のみならず国旗や国章もこの時のものを受け継いでいる
*9 ソ連サイドとしては、こんな歌を歌いまくられたら分離運動が加熱しかねないわけだから…
*10 なお現在のウクライナでこちらの歌を公の場で演奏することは違法である