雑記/複数の言語で歌われる10の国歌 のバックアップ(No.2)


1.

 

複数の言語で歌われる国歌がある――そう言われて、どこが思い浮かぶだろうか。

 

南アフリカ!ワールドカップで話題になったっけ、そう、五つの言語で代わる代わる歌うあの歌だ。

スイス。ああ、確かにそうかも。四つの言語版それぞれが存在している。

ナミビア? ええー…、あのドイツ語版って誰が歌ってるんだ…?

えっ、アメリカ…あー、そうですね、一応スペイン語版があったりするんですよね。

 

――つまるところ、この文章で最初に提示すべき結論は実に面白みのないものだ。

「ある歌が何語で歌われているか」――この基本的な事実すらも、定義により様々なのだ。

 

ある歌には非公式な翻訳版が存在する。

またある歌には政府公認の複数言語でのテキストが備わっており、

あるいは存在するのに事実上誰も歌わない翻訳版がある。

一方で、必ず二言語で歌われる国歌があるかと思えば、

複数の言語版があっても借用語が多すぎてほぼ歌詞が同一だったりする。

そもそも国歌の人気がない国とか、国民の識字率が低くて半数ぐらいが国歌どころじゃない国もあり。

 

…こうしてみると、むしろ「X国の国歌はX語で歌います」とストレートに宣言できる国のほうが少ないのでは?

2.

 

とはいえ「ケースバイケースでーす」で終わらせて盛り上がる話でもない。

人類は常に、不定形で分割不能なあらゆるものを無理やり分類して区別して生きてきているのだ。

 

1. 複数の言語でないと歌えないもの

 

オセアニア/ニュージーランド国歌「神よニュージーランドを守り給え」

アフリカ/南アフリカ国歌「神よ、アフリカに祝福を/南アフリカの呼び声」

南米/スリナム国歌「神よ我らのスリナムとともに在れ」

 

この辺りが該当する、最狭義の「複数言語で歌われる」歌。

要は「一般国民が普通に歌うときに、複数言語を要求される」ものだ。

他言語とはいえ、短い国歌の歌詞を覚えるぐらいであればそんなに手間ではなかろうし、異文化への取っ掛かりとしては良いのかも。

 

スリナムの場合は旧植民地の言語であるオランダ語と、オランダ語をベースにしたクレオール言語であるスラナン語。

ニュージーランドは英語と、先住民族のマオリ語。マオリ語を取り巻く環境に熱心なお国柄だ。

 

南アフリカは5つの言語(コサ語、ズールー語、ソト語、アフリカーンス語、英語)でちょっとずつ歌うメドレー形式。

ただしこの国には憲法で定められた公用語が11個あり、5個では半数にも満たない。

コサ語とズールー語は人口比率のツートップ。ソト語はそれら2つとはやや言語学的に離れた言語なので、バランスを取ってるのかもしれない。最終的に英語になって大多数の国民が理解できるからかテンションが上がっていくのは感じる。

 

3.