ヨーロッパ州/ラトヴィア国歌「神よ、ラトヴィアを祝福せよ」 のバックアップ(No.2)


ラトヴィア国歌

Dievs, svētī Latviju

神よ、ラトビアを祝福し給え

歌詞全文

Dievs, svētī Latviju,
Mūs' dārgo tēviju,
Svētī jel Latviju,
Ak, svētī jel to!
神よ、ラトヴィアを祝福し給え
我々の愛しき祖国を
ラトヴィアを祝福し給え
嗚呼、祝福し給え
Kur latvju meitas zied,
Kur latvju dēli dzied,
Laid mums tur laimē diet,
Mūs' Latvijā!
ラトヴィアの娘らが花咲く処で
ラトヴィアの息子らが歌う処で
幸福な処で我らは踊ろう
我々のラトヴィアで

歌詞逐語訳

Dievs,svētīLatviju,
ディエウススヴェーティーラトヴィユ
神(は)祝福せよラトヴィアを
神よ*1、ラトヴィアを祝福し給え
 
Mūs'*2dārgotēviju,
ムースダールグオテーヴィユ
我々の(その)愛しき*3)祖国を
我々の愛しき祖国を
 
SvētījelLatviju,
スヴェーティーイェルラトヴィユ
祝福せよ(強意)*4ラトヴィアを
ラトヴィアを祝福し給え
 
Ak,svētījelto!
アクスヴェーティーイェルトゥオ
嗚呼祝福せよ(強意)それを
嗚呼、祝福し給え
 
Kurlatvjumeitaszied,
クルラトヴュメイタスズィエド
どこ*5ラトヴィア(の民)の*6娘らが咲く
ラトヴィアの娘らが花咲く処で
 
Kurlatvjudēlidzied,
クルラトヴュデーリヅィエド
どこラトヴィア(の民)の息子らが歌う
ラトヴィアの息子らが歌う処で
 
Laidmumsturlaimēdiet,
ライドムムストゥルライメーディエト
させよ我々にそこで幸せ(なところで)踊ることを
幸福な処で我らは踊ろう*7
 
Mūs'Latvijā!
ムースラトヴィヤー
我々のラトヴィアで
我々のラトヴィアで

特記事項

  • 四行でひとまとまりであり、前半も後半もそれぞれ二回ずつ繰り返す。
  • 作詞・作曲はカールリス・バウマニス(1835-1905)。ヴィゼメ地方(ラトビア北部)リムバジ市出身の作曲家・教師・ジャーナリストであった。リーガラトビア協会の議長と歌唱委員会の委員に選ばれ、第一回民族歌謡祭の準備に大きく参画した。
  • 国民性の根幹を成す合唱文化と総勢26万首の圧倒的な民謡文化の厚みが、また、様々な国や民族による被支配の長い歴史が、穏やかに、真っ直ぐに平和を歌うこの曲に深みを与える。

言語的解説

  • 印欧語族のバルト語派に属し、リトアニア語と並んでヨーロッパで最も古風な言語である。
  • リトアニア語と比べると、エストニア語やリヴォニア語などのバルト・フィン諸語の影響を受けており、たとえば「伝聞法」(「~らしい」等を表す)という文法事項が新しく生えていたりする。
  • ダイナ(Daina 「ラトビア民謡」とも)と呼ばれる固有の韻律で書かれた四行詩が(異同等を全て含め)約26万首存在し、これが日本でいう万葉集の役割を果たしている。
  • 長音記号(マクロン)がこの言語の特色であり、アイデンティティの一部にもなっているようで、歌にも歌われるほどである。本稿もカナ転写では曲の拍に関係なく長母音と短母音を区別した。
  • eの発音に二種類(広:/ɛ/, 狭:/e/)あるのがもう一つの音韻上の大きな特徴で、日本語話者の感覚だと広い方のeは「ア」に聞こえることがある。
  • 「ラトビア」、「ラトヴィア」などと表記されるが、原語に一番近いのは「ラトヴィヤ」である。

謝辞

本稿は髙浦啓樹さん(@H_Tacaurus>)にお寄せいただきました。Paldies!(ありがとうございます!)

高浦さんにはリトアニアも書いて頂いてます。重ねてありがとうございます!





*1 Dievsは主格だが、翻訳の慣用に従う
*2 本来 Mūsu だが、韻律の都合により母音脱落(アポストロフィが脱落箇所を示す)
*3 dārgoは形容詞限定形(英語でいう冠詞付き
*4 命令であることを示す副詞
*5 kurは疑問詞だが、関係代名詞としても使われる
*6 latvju(主格:latvis)は民族名なので「ラトヴィア人の」
*7 この行は