ヨーロッパ州/ポーランド国歌「ドンブロフスキのマズレク」 のバックアップ(No.2)
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- 1 (2021-06-29 (火) 19:23:40)
- 2 (2021-06-29 (火) 23:09:16)
- 3 (2021-08-01 (日) 23:23:25)
Jeszcze Polska nie zginęła
ポーランド未だ滅びず
{別名:「ポーランド人部隊の歌」}
歌詞全文
Jeszcze Polska nie zginęła, Kiedy my żyjemy. Co nam obca przemoc wzięła, Szablą odbierzemy. Marsz, marsz, Dąbrowski, Z ziemi włoskiej do Polski. Za twoim przewodem Złączym się z narodem. Przejdziem Wisłę, przejdziem Wartę, Będziem Polakami. Dał nam przykład Bonaparte, Jak zwyciężać mamy. Marsz, marsz, Dąbrowski... Jak Czarniecki do Poznania Po szwedzkim zaborze, Dla ojczyzny ratowania Wrócim się przez morze. Marsz, marsz, Dąbrowski... Już tam ojciec do swej Basi Mówi zapłakany – Słuchaj jeno, pono nasi Biją w tarabany. Marsz, marsz, Dąbrowski... | ポーランドは未だ滅びず 我らが生き続ける限り 他国の軍勢が奪い去りしもの 我ら剣にて奪還せん 進め、進め、ドンブロフスキ イタリアの地からポーランドへ 汝の指揮のもと 我ら団結し国家とならん ヴィスワ川を渡り、ヴァルタ川を越え 我らはポーランド人となる ナポレオンが我らに示してくれた 勝利を得る方法を 進め、進め、ドンブロフスキ…(繰り返し) チャルニェツキがポズナンへと スウェーデンによる侵攻の中、馳せ参じたように 祖国を救わんがため 我らは海を超えて戻ってくる 進め、進め、ドンブロフスキ…(繰り返し) 父親が娘のバーシャに 涙ながらに語る; 「よくお聞き、娘よ、我らの軍は 勝利の太鼓を打ち鳴らしているそうだ」 進め、進め、ドンブロフスキ…(繰り返し) |
歌詞逐語訳
1.
Jeszcze | Polska | nie zginęła, |
イェシチェ | ポルスカ | ニェ・ズギネワ |
まだ | ポーランドは | 滅びない |
ポーランド未だ滅びず、 |
Kiedy | my | żyjemy |
キェディ | ムィ | ジイェムィ |
~する時は | 我らが | 生きる |
我ら生き続ける限り。 |
Co | nam | obca | przemoc | wzięła |
ツォ | ナム | オプツァ | プシェモツ | ヴジェワ |
もの | 我らから | 他国の | 圧政(文字通りには暴力)が | 奪った |
他国の軍勢が我らより奪い去りしもの*1、 |
Szablą | odbierzemy |
シャブロン | オドビェジェムィ |
剣にて | 我々は奪い返す |
剣にて我ら奪還せん |
リフレイン:
Marsz | marsz | Dąbrowski |
マルシ | マルシ | ドンブロフスキ |
進め | 進め | ドンブロフスキ |
進め、進め、ドンブロフスキ |
Z ziemi | włoskiej | do Polski |
ッジェミ | ヴウォスキェイ | ド・ポルスキ |
地から | イタリアの | ポーランドへ |
イタリアの地*2より、ポーランドまで |
Za | twoim | przewodem |
~のもと | あなたの | 指揮 |
汝の指揮の元 |
Złączym się | z narodem |
我々は団結する | 国とともに |
我ら団結し国家たらん。 |
2.
Przejdziem | Wisłę, | przejdziem | Wartę, |
プシェイジェム | ヴィスウェン | プシェイジェム | ヴァルテン |
我らは越える | ヴィスワ川を | 我らは越える | ヴァルタ川を |
ヴィスワを渡り、ヴァルタを越え) |
Będziem | Polakami. |
ベンジェム | ポラカミ |
我らは~であるだろう | ポーランド人 |
我ら、ポーランド人とならん |
Dał | nam | przykład | Bonaparte, |
ダウ | ナム | プシクワド | ボナパルテ |
与えた | 我らに | 例 | (ナポレオン)ボナパルトが |
ボナパルトは我らに示した |
Jak | zwyciężać | mamy. |
ヤク | ズヴィチェンジャチ | マムィ |
どのように | 勝つことを | 我らが手にする |
勝利を得る方法を |
3.
Po | szwedzkim | zaborze, |
ポ | シフェツキム | ザボジェ |
~のあとで | スウェーデンの | 占領地*5 |
スウェーデンの占領地を抜けて戻ってきたように |
Dla | ojczyzny | ratowania |
ドラ | オイチズヌィ | ラトヴァニャ |
~のために | 祖国の | 救済 |
祖国を救わんがため |
Wrócim się | przez | morze. |
ヴルチム シェン | プシェズ | モジェ |
我らは帰ってくる | ~を越えて | 海 |
我らもまた海を超えて帰還せん。*6 |
4.
Już | tam | ojciec | do | swej | Basi |
ユシ | タム | オイチェツ | ド | スフェイ | バシ |
もう既に | あそこで | 父が | ~に | 自らの | バーシャ*7 |
いま父親が、娘のバーシャに |
Mówi | zapłakany |
ムヴィ | ザプワカヌィ |
語る | 泣きながら |
涙ながらに語る、 |
Słuchaj | jeno, | pono | nasi |
スウハイ | イェノ | ポノ | ナシ |
聞け | ただ*8 | おそらく | 我らの(軍は) |
よくお聞き、我らの軍は |
Biją | w tarabany. |
ビヨン | フタラバヌィ |
叩く | 太鼓を*9 |
勝利の太鼓を打ち鳴らしているそうだ |
特記事項
- 作詞者はユゼフ・ヴィビツキ (Józef Wybicki)
- 元の旋律の作曲者は不明。国歌としての編曲はカジミェシ・シコルスキによる。
- 曲中に登場する「ドンブロフスキ将軍」の友人でもあり、ナポレオンの元で亡命ポーランド人部隊を編成した際の主要人物。
- 1927年に議会で公式に国歌とされる以前にも、19世紀からポーランドの非公式な国歌として歌われていた。
この曲の旋律はスラヴ民族全体への賛歌である「スラヴ人よ」という歌にも流用されている。ユーゴスラヴィアの国歌にもなっていた。 - さらにこの「スラヴ人よ」、元を辿ればスロヴァキア人の詩人サモ・トマーシクが「スロヴァキア人よ」として書いたものなので、スロヴァキア人にも愛されている。
- 1-4番まであり、間にリフレインを挟んで通常4番まで歌われる。全部通してもそれほど長くない。
- なお原詩は全6節であり、制定に際し省かれた部分がある(後述)。ロシア人に対するポーランド語の蔑称「Moskal モスカル」が使われていたりするからか。
- 何よりもまず、作られたのが「ポーランド分割」により祖国が失われていた期間であること。
- 折しもこの詩の成立の2年前に遡る「第三次ポーランド分割」により、「国土の一部を喪失・属国化」とか「名ばかりの傀儡政権が残る」などという生易しいものではなく、地図から完全にポーランドの名が抹消されていた時期である。
- そんな中、祖国を分割したロシア帝国に抗うべく、かの有名なナポレオンの元へポーランド人が集まり「亡命ポーランド人軍団」を組織する。*10
- この辺の背景あっての「我ら生き続ける限り、ポーランド未だ滅びず」という歌い出しである。そこらの国が「永遠」とか「不滅」をこともなげに歌うのとは圧が違う。なにしろ当時のポーランドは――繰り返しになるが――実際に一度滅びていたのだから。
- ポーランド語の正書法は割と複雑なことで知られる。
- zginęła などの "ł" の字は「L」に横棒がついたもの。概ねワ行の発音。
- ó は 「ウ」。
- "ę"と"ą"は それぞれ「e」と「o(aではなく)」の鼻母音。
「エン」「オン」と思ってもらって概ね差し支えない。łの前では鼻母音が消失するので zginęła は「ズギネワ」。 - y は「ウとイの中間ぐらいの音」。
- w はドイツ語同様にヴァ行だが、tw や sw などでは無声化し tf- sf- のように発音する。 twoim は「トフォイム」。
- sz はシャ行、cz はチャ行。 ż と rz は同じ発音で、概ねジャ行。
おまけ:国歌制定に伴い削除された「3番」「6番」
Niemiec, | Moskal | nie | osiędzie, |
ニェミェツ | モスカル | ニェ | オシェンジェ |
ドイツ人 | モスクワ野郎 | ~しない | 居着く |
ドイツ人もモスクワ野郎もここには居させない |
Gdy | jąwszy | pałasza, |
グディ | ヨンフシィ | パワシャ |
~する時 | 手に取り*11 | サーベルを |
サーベルを抜き放ち、 |
Hasłem | wszystkich | zgoda | będzie |
ハスウェム | フシストキフ | ズゴダ | ベンジェ |
合言葉 | 全員の | 団結 | ~であるだろう |
「団結」が皆の合言葉となるとき |
I | ojczyzna | nasza |
イ | オイチズナ | ナシャ |
~もまた | 祖国 | 我らの |
そして祖国の合言葉となるときには |
Na | to | wszystkich | jedne | głosy |
ナ | ト | フシストキフ | イェドネ | グウォスィ |
~に対し | この | すべての | ひとつの | 声 |
Dosyć | tej | niewoli |
ドスィチ | テイ | ニェヴォリ |
もう沢山だ | この | 隷属*12 |
このような隷属はもう沢山だ |
Mamy | racławickie | kosy |
マムィ | ラツワヴィツキェ | コスィ |
我らは持つ | ラツワヴィツェの | 大鎌 |
我らにはラツワヴィツェの大鎌*13があるし、 |
Kościuszkę | Bóg | pozwoli. |
コシチュシケン | ブク | ポズヴォリ |
コシチューシコ | 神 | 認める |
コシチューシコ*14もいる。神も認めてくださるだろう! |
*1 ポーランド分割で失われた領土、ひいては祖国そのものを指す
*2 この詩が書かれたのは、ナポレオンのイタリア戦役の最中。作詞者は北イタリアでこの詩を書いたのである
*3 ポーランドの歴史上の英雄
*4 ポーランド中部の都市
*5 「分けられたもの」、英語では Partition と訳されうる語彙。ポーランド分割で作られた3つの領土にも同じ zabór という単語が当てられ、Zabór austriacki「オーストリア占領地」、Zabór Rosyjski「ロシア占領地」などのように呼ぶ。
*6 ヴィビツキの原詩では、「Wrócił się 彼は戻ってくる」と、戻ってくるのはチャルニェツキひとりということになっている
*7 バルバラ(Barbara)の愛称形。ポーランドでは一般的な女性名
*8 やや古風な言い回し。現代語ではtylkoかな
*9 現代語ではティンパニを意味するが、ここでは軍隊で使われる太鼓を指し、「戦勝して勝利の太鼓を叩いている」ということ。
*10 歌詞の2番にもナポレオンの名(Bonaparte)の名が登場する
*11 古い言い回し。原形はjąć。しかも副動詞などという中々お目にかかれない語形。エモい
*12 原義はnie「非」woli「自由」
*13 ロシア帝国を相手取ったラツワヴィツェ村での戦闘では、大鎌(kosa, 複数でkosy)を装備した農民兵が活躍し、勝利の象徴となった。後に亡命ポーランド人で編成された英国国軍の部隊は、紋章にこの大鎌を描いている
*14 上記の戦いを指揮したのが英雄コシチューシコ