ヨーロッパ州/北マケドニア国歌「今日、マケドニアの上に」
Wed, 05 Jul 2023 10:34:43 JST (533d)
Денес над Македонија
Denes nad Makedonija
今日、マケドニアの上に
歌詞全文
Денес над Македонија се раѓа, ново сонце на слободата! Македонците се борат, за своите правдини! Македонците се борат, за своите правдини! | 今日、マケドニアの上に 新たな自由の太陽が生まれる マケドニア人は闘う 自らの権利のために マケドニア人は闘う 自らの権利のために |
2番は歌われない事が多い |
|
Одново сега знамето се вее, на Крушевската република! Гоце Делчев, Питу Гули, Даме Груев, Сандански! Гоце Делчев, Питу Гули, Даме Груев, Сандански! | いま再び旗が翻る クルシェヴォ共和国の旗が ゴツェ・デルチェフ、ピトゥ・グリの ダメ・グルエフ、サンダンスキの旗が ゴツェ・デルチェフ、ピトゥ・グリの ダメ・グルエフ、サンダンスキの旗が |
Горите македонски шумно пеат, нови песни, нови весници! Македонија слободна, слободно живее! Македонија слободна, слободно живее! | マケドニアの森は高らかに歌う 新たな歌を、新たな知らせを 解放されたマケドニアは 自由のうちに生きていると 解放されたマケドニアは 自由のうちに生きていると |
歌詞逐語訳
1.
Денес | над | Македонија | се раѓа, |
Denes | nad | Makedonija | se raǵa |
デネス | ナド | マケドニヤ | セ ラギャ |
今日 | ~の上に | マケドニア | 生まれる |
今日、マケドニアの上に |
ново | сонце | на | слободата! |
novo | sontse | na | slobodata |
ノヴォ | ソンツェ | ナ | スロボダタ |
新しい | 太陽 | ~の | 自由 |
新たなる自由の陽が生まれた |
Македонците | се борат, |
Makedontsite | se borat |
マケドンツィテ | セ ボラト |
マケドニア人たち | 戦う |
マケドニア人は戦う、 |
за | своите | правдини! |
za | svoite | pravdini |
ザ | スヴォイテ | プラヴディニ |
~のために | 自らの | 権利 |
自らの権利のために! |
2番は歌われない事が多い |
2.
|
3.
Одново | сега | знамето | се вее, |
Odnovo | sega | znameto | se vee |
オドノヴォ | セガ | ズナメト | セ ヴェエ |
再び | いま | 旗 | はためく |
今再びはためく旗は |
на | Крушевската | Република! |
na | Krushevskata | Republika |
ナ | クルシェフスカタ | レプブリカ |
~のため | クルシェヴォ | 共和国 |
クルシェヴォ共和国*1の旗だ。 |
Горите | македонски | шумно | пеат, |
Gorite | makedonski*6 | shumno | peat |
ゴリテ | マケドンスキ | シュムノ | ペアト |
森*7 | マケドニアの | 高らかに*8 | 歌う |
マケドニアの森は高らかに歌う |
нови | песни, | нови | весници! |
novi | pesni | novi | vesnitsi |
ノヴィ | ペスニ | ノヴィ | ヴェスニツィ |
新しい | 歌 | 新しい | 知らせ |
新しい歌を、新しい知らせを |
Македонија | слободна, |
Makedonija | slobodna |
マケドニヤ | スロボドナ |
マケドニア | 自由な |
自由なマケドニアは |
слободно | живее! |
slobodno | zhivee |
スロボドノ | ジヴェエ |
自由に | 生きる |
自由のうちに生きている、と! |
特記事項
- 2番が歌われないケースが多い。
- 特筆すべきはほぼ固有名詞しか出てこない3番。訳文が訳文にならないという面白い事態となった。
- そこだけ見るとおもしろソングかもしれないが、そこに出てくる人物がいずれも民族的出自を異にする存在というのが趣深い。
- …というか、「マケドニア人」という民族意識の目覚めはかなり遅く、最初は自分たちをブルガリア人と自認していたり、そのせいでブルガリア領にされたり、オスマン帝国に返されたりと、色々アイデンティティがとっ散らかっていた地域でもある。
- 最終的にユーゴスラヴィア国内の共和国を経て紆余曲折の末に独立するのだが*9、そのへんは当Wikiの仕事ではないため歴史家の皆さんに委ねる。
- 言語的には、特段難しいところのある表記ではない…はず。*10
- 他のスラヴ語にない文字として 「ѓ」がある。г(g)に記号を付したもの。/ɟ/ ないし /dʑ/ なのでここではギャ行とした。
- この歌にはたまたま出現しないが、破擦音のザ行/dz/を表すЅ*11とか、同じく破擦音のジャ行/dʑ/の Џ とかが存在する。
*1 中部の町・クルシェヴォでごく短期間成立した反オスマン勢力の国。10日間しか存在しなかったが、この際に行われた「クルシェヴォ宣言」が独立運動の重要な位置を占めている。
*2 「内部マケドニア革命機構」の創設者。北マケドニアのみならずブルガリアでも英雄視されている。現ギリシャ領キルキス出身。
*3 こちらも同様に革命家。両国で崇敬を受けている点も同様。現・北マケドニアのクルシェヴォ出身だが、民族的にはアルーマニア人(ルーマニア人と近縁のロマンス系民族
*4 同じく革命家。本名ダミアン・グルエフ。
*5 ヤネ・サンダンスキ。勿論というか、この人も革命家。現ブルガリアのヴラヒ出身。ここまでの4人のうち「北マケドニア出身のマケドニア民族」はなんと1人だけ。バルカンの革命は民族横断的だったんだなあ…
*6 スラヴ諸語では固有名詞でも形容詞の場合小文字で始まるのがスタンダード。
*7 単数は gora である。多くのスラヴ語で gora は「山」だが、マケドニア語とブルガリア語では「山」は廃義に近く、むしろ「森」を指す。「山」はブルガリア国歌にもあるように「планина planina」である
*8 原語のшумноは「うるさく」。興味深いことに、セルビア語などで「森」を指すшумаとは同源である
*9 そして独立後も国名のことでギリシャと散々揉めてきたのだが
*10 なお言語勢はしょっちゅうこの辺のさじ加減を間違える。
*11 ラテン文字のS(エス)とは異なる文字